「光をあてる」をテーマに、これまで一貫して映像プロジェクションによるインスタレーションを国内外で多数発表。その表現は路地裏から美術館まで場所に限定することなく自由に展開される。
芸術村での滞在中、彼は地域の人から使われなくなった長靴を集め、長靴を型としてその中に直接蠟を流し込み、「ろうそくの長靴」を制作した。映像作品という「光」を扱う彼が、その一番クラシックなモチーフとして蝋燭の作品を制作した。映像以外の作品を手がけたのは今回が初めてであった。無色(蠟本来の色)で制作された長靴からは、見るものに性別、年齢を感じさせない。特定の人物を想像させないのだ。特定でないということが、時間というものを意識させる。作業のほとんどは、黙々と蠟を溶かし成形するという反復だったのだがそれは、今回の芸術村での制作に際し、都市とは違う独特な時間の流れの中で、それに即した制作方法の試みでもあった。出来上がったすべての蝋燭の一夜限りの点灯は、展示の場であった芸術村の中庭階段に、今までにない新たな光をあてた作品となった。
サポート 滞在期間:2012-2013