渡辺郷の作品の多くは、言葉の壁をたやすく越えてしまう見事な手法で、日常生活における些細なアクションやツールを、視覚的なギャグに変換してしまうものである。
渡辺は2003年の公募で選出されAIAVからnifcaへ派遣された。当時の滞在の様子を「nifcaのレジデンスとは、でっかいアートコミュニティーの支店で、アーティストたちが互いに情報を共有してゆく場のような印象をもった」と振り返る。そうしたアーティストらの活発な往来は、日本のレジデンスではあまり例がない。そのなかでnifca滞在中は地元ヘルシンキのアーティストとの交流も活発に行った。滞在地では『GO,GO,ヘルシンキ』と題した超個人的ガイドマップを作製しAIAVのフレンズネット会報へ寄稿した他、北欧ヘビーメタルのドラマーが、シベリウス作曲『フィンランディア』をヘッドフォンで聞きながらドラムを叩き続けるビデオ作品『フィンランディア』等を制作した。