ブックタイトル秋吉台国際芸術村 Akiyoshidai International Art Village レジデンス・サポート・プログラム
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秋吉台国際芸術村 Akiyoshidai International Art Village レジデンス・サポート・プログラム
76この土地の未来 今年の秋吉台の山焼きは、珍しく予定通り火入れができた。好天に恵まれ草原は冬の装いから瞬く間に黒一色に変わった。この草原に新芽が吹きやがて春の陽射しを受けて一面新緑に変わる。この山焼きに秋吉台国際芸術村のアーチストを案内して10数年になるが、せっかく外国からこの青景に来られたのだから何かおもてなしをと考え、秋芳国際交流協会と協力して、極めて単純な話だが昨年から食事を提供することにして、山焼きが終わって村の集会所で地域の人々と、交流の場を持つことにした。展示会も近づいて時間に追われて焦る気持ちもあるだろうが、一時忘れて日本の農村の風景を眺めながら、ゆっくりとした時間を過ごして貰いたいと思う。反面、自動車と先端技術の日本というイメージの裏に、過疎と高齢化に苦しむ農村の人々があることも知ってほしい。毎年訪れるアーチストから聞けば、農村の問題は温度差はあるものの世界共通の課題らしい。 この地方の食材や、日本海の魚を中心とした日本料理の外、地元の営農組合の組合長夫妻が、イノシシ鍋をつくって参加、日頃農作物を荒らすイノシシも今日は山からの贈り物になって賑やかな食卓になった。集会所の裏山にある急な石段を登ると、山頂に村の小さな神社がある。その狭い境内にも土地の神、風の神、学問の神々が祭ってある。神々様も今日は外国からのお客さんにびっくり、でもきっと皆さんを歓迎しておられますよといえば、神妙に手を合わす人もいた。境内の片隅にある風の神様は村の奥山の高い所にあって、お年寄りはお祭りにも行けないので、3年前に神様にお願いしてこの場所に降りて頂いたと小さな杜を示すと、それで神様のハウスが新しいのだと皆笑った。日本の庶民信仰の実態と村人の気持ちが伝わったことと思う。 神社から眺めれば、冬空の下に春を待つ村の風景が拡がる、石段をはしゃぎながら下りる若いアーチストの背からは明るい未来と希望が溢れているように見えるが、私にとって「この土地の未来」は果たしてと思う。アーチストの描く「この土地の未来」が楽しみである。 都市農村交流 おむすびの里代表 吉村 徹