ブックタイトル秋吉台国際芸術村 Akiyoshidai International Art Village レジデンス・サポート・プログラム 2017-2018

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概要

秋吉台国際芸術村 Akiyoshidai International Art Village レジデンス・サポート・プログラム 2017-2018

76ワークショップへの寄稿文 1 月30 日に秋吉台国際芸術村から海外アーティストのイ・スジンさんを招いてのワークショップが本校で開催することが決定してからの数週間、生徒も私も当日を心待ちにしていた。第2学年の生徒たちは昨年度もこのワークショップを受講している。その際のテーマは、普段何気なく見過ごしている日常風景の中から、「何かがいた痕跡」を発見し、写真に収めるというものであった。生徒たちが校内外で撮影して持ち帰った作品の「グラウンドの足痕」や「雨どいの口に広がる苔」からは幻想的な美しさと事物が存在する意味をうかがい知ることができた。 そして迎えた今年度。今回は、「不思議な共同プロジェクト」と題して、生徒が自由に画材を選択して、自然に溶け込む抽象的なオブジェクトを制作することからスタートした。生徒たちは、取り掛かりこそとまどいながらも用意された段ボールや針金、画用紙などを手に取って試行を重ねていく。うまくいかないときには、周囲やイ・スジンさんへ積極的にアドバイスを求めていた。幼少期にスコップを持って砂場で無邪気に遊んだあの感覚、あのときの笑顔が教室中に満ちている。「そうだ、これなのだ。」忘れかけていたものづくり本来の楽しさを自らも制作空間を共有することで再認識した。 オブジェクトが完成した後は、屋外へ出て木々を糸で結び、そこに作品と各自が持参した思い出の品物を吊るして、生徒一人ひとりの思いを乗せたインスタレーションを形成。 単体でも成立するはずの作品が、カラフルな糸に絡み合いながら幻想的な共同作品として一つの命を吹き込まれた瞬間ともいえた。大空を舞う鳥になったならば、秋芳中学校の一角に出現したこの空間はどのように映ったであろう。 - 昨年、「虫の眼」によって微細に対象を観察した我々は、今年、「鳥の眼」のごとく作品を俯瞰して鑑賞している -  斬新な教材でいかに生徒の興味をひくか、という指導に固執していた私にとって、忘れかけていた「ものづくりの原点」や「美術科教育の本質」の部分に立ち返る機会を与えていただいたと実感した。無論、生徒たちにとっても日頃の授業では体感することのできない貴重な時間となったことはいうまでもない。 新しい学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」に併せて「社会に開かれた教育課程」を見据えた家庭・地域との一層の連携推進が謳われている。日本ジオパークであるわが秋芳町の人材や環境と積極的に協働・活用した教育を今後も広く実践していきたい。来年のこの時期をまた心待ちにしながら・・。美祢市立秋芳中学校 教頭(美術科担当) 新居 淳治