身体からドラマが生まれる - The Birth of the Dramaセミナー
秋吉台芸術アカデミー 1998年身体表現アカデミー
今回の試みは、台詞の呪縛からひとまず離れて、自分の身体からドラマを作ってみようというものだ。自分の体から生まれる動きと言葉でドラマを作っていく。あわよくば、言葉なしの動きだけでドラマを作る。そうすることで、また違った演劇の風景が見えてくるかもしれない。”
- マスター・アーティスト 知念 正文(ちねん まさふみ)
プログラムの概要
- 山口県内の身体表現を中心に活動している人、身体表現に関心のある人を対象とします。
- 今回は、特に演劇における身体の表現に焦点を絞って、特定の情景や感情、ストーリーを身体でいかに表現するかがテーマとなります。
- このアカデミーでは、今後芸術に限らず、ダンスやパフォーマンス・アートも取り上げて幅広く身体表現を学ぶ場としています。
- 最終日にはマスターの演出により公演を行います。これは一般公開の予定です。
日時 | 1998年12月24日(木)~12月28日(月) |
募集人員 | 応募申し込みの先着順にて40名程度 |
参加料 | 学生(高・大生):15,000円(五泊分の宿泊費、五日分の夕食費込み) 一般A:20,000円(五泊分の宿泊費、五日分の夕食費込み) 一般B:15,000円(二泊分[宿泊日は選択可]の宿泊費、五日分の夕食費込み) |
しめ切り | 1998年12月17日(木) |
チラシ | チラシはこちらから(PDF) |
- 主催 秋吉台国際芸術村、(財)山口県文化振興財団
- 後援 秋芳町
マスター・アーティスト
知念正文
劇団鳥獣戯画主宰。劇作・演出・作詞家、振付、俳優。1950年東京に生まれる。早稲田大学在学中「劇団 暫」を結成、つかこうへい氏らとともに活動。1975年石丸有里子らとともに劇団鳥獣戯画創立。以来、同劇団にて創作・演出・振付・出演をして現在に至る。
「好色五人女」、「魔人街」、「桜姫恋袖絵」等の執筆活動を行うほか、作詞家としても活動。
ポンキッキーズ等テレビ番組の振付も手がける。
劇団 鳥獣戯画
1975年、知念正文・石丸有里子等によって劇団が創立される。旗揚げ公演は、シュールレアリスムの作家ジャリの「ユビュ王」。やがて、歌舞伎ミュージカルというジャンルを開拓して、人気を博す。「好色五人女」、「雲にのった阿国」、「白浪五人男」、「真夏の夜の夢」などを劇団のレパートリーとして再演を重ねる。
次第に新しい方向も生まれ、現在の社会問題を新しい舞台表現で表すパフォーマンスドラマも生まれ、「トリッピング・ミスターじじい」、「お母さんはフランケンシュタイン」、「家族ダンス」など、老人問題・家庭内暴力・幼児虐待問題に光を当てている。若い層に人気のある「ゾンビシリーズ」と銘うったゾンビミュージカルも今年で9作目を数えている。
現在は歌舞伎ミュージカルとパフォーマンスドラマとゾンビシリーズの3つのスタイルの作品を定期公演として公演している。
その他に、不定期の公演として「トリッピング・ミスターじじい」、「すずきさんち」、「はちかつぎ姫異聞」、「むずむずうずうずコンサート」、「わくわくどきどきファミリーコンサート」、「動物大好き!人間大好き!コンサート」を全国展開中。
レポート
セミナーに関する講師との事前打ち合わせの中で、このワークショッでは台詞に頼らず、体の動きによっていかに演劇的表現を行うかをテーマにすることを確認した。具体的には、セミナー参加者が期間中にみせる体の動きから各自の適正を判断し、それを肉付けして一つのキャラクターを作り上げる。そして個々のキャラクターをそれぞれ関連づけて一つのドラマを作り上げるという手法をとることになった。
セミナーの期間は5日間。最終日には一つの作品を仕上げ、公開することになっている。実質的にドラマを作るための時間は4日間しかない。受講生の構成も市民劇団や大学、高校の演劇部に所属する人から全くの素人まで、プロの役者さんはいない。大丈夫かな、と思う。セミナーは毎回必ず基本体操から始まった。基本体操はいわゆる柔軟運動と軽いランニングを行うというものだった。その後でそれぞれの時間帯で簡単なテーマを決めて各自が体を使った即興の表現をするのだけれども、どうもうまく行かないようだ。たとえば、実際の道具を使わずに、バレーや卓球の試合を表現する、というテーマが出されたときなどは、正直なにをやっているのかわからないのだ。このセミナーで初めて顔を合わせたもの同士でなかなか息が合わないということもあるのだろうが、一番の問題は、受講生たちがバレーや卓球のことを知らない(ようにみえる)ことだろうと思う。バレーをよく見ていたなら、試合中バレーで得点が決まるときの選手の動き方、反則を犯すときの動き、審判の動作などが思い浮かぶだろう。その中からよくある動きや滅多にない動き、あり得ない動きを抽出して、それを組み合わせて演じるということができると思う。もちろんスポーツそのものをリアルに演じるだけでは演劇的な面白みは表現できないのだけれど、そのスポーツ本来の動きを知っていれば、演劇的にその動きをアレンジしていくのもよりやりやすくなるように思う。演技者は、演じられる対象をよく知っていなければならないということを強く感じた。
なかなかうまくいかない即興表現訓練でしたが、ここから先が講師の力量の見せ所で、少しずつ受講生の表現しやすいテーマを設定して、適正を見極めていったようだ。そして3日目には発表作品のテーマとそれぞれの配役が決まった。テーマはマラソン。受講生たちはひたすら走り続けるランナーに扮する。そして一人一人に“前半とばしまくって後半バテる”、“仲良し二人組、だけど片方が裏切る”、“最初から最後まで歩き続ける”などのキャラクターが割り振られた。その後は、マラソンレースの展開に沿った場面設定でドラマが構成されていったのだが、驚いたのは、キャスティングの的確さだった。それまでは演技というより好き勝手な自己表現を繰り返していたように見えた受講生たちが、ただ走っているだけで、何となく割り当てられたキャラクターを演じているように見えてきたのだ。などとあらためて演出にはキャスティングの才能も必要なのだなぁと感心しているひまもなく発表会が近づいた。直前になって3つも新しいシーンが付け加えられ、そのためのBGMを探したりと大慌てで間に合わせた形になったが、踊りあり、笑いあり、人生の悲哀(?)ありの、娯楽劇が完成したのでした。
掲載記事
1998年11月30日山口新聞
1998年12月26日山口新聞
1998年12月30日山口新聞
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